32. ~濱中史朗 スタッズカップ レオパード~作品レビュー

こんにちは、のぶちかです!
本日は、
「いつ本業の記事を書くのか?」
という御意見を頂く事が増えてきましたので、記念すべき第1回目の作品レビューとして今や萩市を代表する作家となって久しい「濱中史朗」氏の作品をレビューします。

濱中史朗 略歴
1970 山口県萩市出身
1998-1999 出張料理人 佐々木 志年氏のもと助手
2012 高野山開窯
~主な企画展~
TREASURE/Paris 2006
さる山/東京 2006-
bonton/神戸 2007-
Belles Fleurs/山口 2008
Design Tide TOKYO CIBONE AOYAMA/東京 2008
LOUTO/広島 2009
ミラノサローネ ボッテガベネタ 日本のデザインと伝統/ITALIA 2010
TOMIO KOYAMA GALLERY KYOTO/京都 2012
清洲国際工芸ビエンナーレ/韓国 2013
“鐵”展 叢×濱中史朗 ref./広島 2014-
”現代陶芸現象” 茨城県陶芸芸美術館/茨城 2014
gallery’s eye -選ぶ力- Kaikai Kiki Gallery/東京 2015
作品レビュー
作品名
「スタッズカップ レオパード」

「レオパード」とは、西欧語で「豹(柄)」の意味。
金属釉の結晶が豹の斑点の様にランダムに表れた様子から付けられた名称。
スペック
サイズ:74×74×102㎜
容量:200㏄
重さ:230g

このサイズ感で230gはやや重たく感じられる方もおられるでしょう。
確かに高取焼の様に重量として非常に軽い焼物もありますが、一方で陶芸界には、
「軽過ぎてはいけない。そのものの風格に相応しい重さをたたえる事が重要である」
という考え方も割と広く浸透しています。
私が聞いた生のお声としても、萩焼では13代田原陶兵衛先生、備前焼では金重有邦先生もそうおっしゃっておられました。
では濱中氏のこの作品はどうか?

まず、「風格」が違います。
フォルムバランス
釉質
色調
触感
削り
厚み
高台
これら全ての部位に濱中氏の魂が宿り、そこには陳腐な軽々しさは存在しません。
そしてこのクラスの作域の場合、もし何も知らずに私がこの作品を手で持ち上げた時に軽過ぎたなら、
「軽い!」
と、感動する事はありません。
やはり、
「軽すぎてはいけない」
というあの言葉が浮かぶ事でしょう。

ちなみに口造り(口縁)の厚みは2㎜。
胴部は計測はできませんが指で口造りから胴までを触り進めると、推定3㎜~4㎜程度。
スタッズ部の厚みも、触感ではスタッズの厚みに対しプラス2㎜以内がボディの厚みと推定できます。
つまり、一番重量がかかっている部分は、茶だまり(器内側の底部)から畳付き(器外側の最低部)までの部分と言えます。
ここに重心がくる器や酒器、カップ類は持っていて本当に心地良いです。
よくバカラのグラスでも底がとても厚いのにボディはとても薄いものがあります。
あれも慣れるまでは持つ手に違和感を感じますが、慣れるとあの重心が非常に心地よくなります。
またその重心は形状的に縦型のショットグラスタイプの場合は、陶磁器でもガラスでも同じく言えるのです。

逆に同じ重さでも心地良くない重さがあるとすればどういう構造が原因か?
それは全体が均一の厚みだったり、ボディ部の厚みが厚過ぎたり、底部が軽く上部が重い構造です(←このケースはプロの仕事にはほとんど見られませんが)。
濱中氏の作品がシンプルなのになぜ選ばれ続け、ファンをずっと魅了するかと言えば、作品外観のセンスだけでなく、その作品がもつ風格に見合った重量感、そこからくる存在感、持った時に心地の良さを感じる重量感があるからだと捉えています。
現実、私たちは食器棚からさりげなくコップを取り出す時、無意識のうちに「重過ぎるもの避ける」傾向がありませんか?
つまりそれは、どんなに気に入って買った作品でも普段使いをイメージして買ったものの場合、人は視覚的な点よりも徐々に使用感を重視し始めるという事です。
その点にも抜かりが無い作品だから愛され続け、使われ続けるのだと考えています。

使用感
口造りが2㎜とやや薄めな点も、口元での酒の切れを良くし、美味しく感じさせてくれます。
またこの作品でウイスキーや日本酒を飲むと、ガラス酒器と飲み比べた時に驚くほど酒の味が変わります。
若い酒はその少し尖った風味がマイルドに落ち着き、
マイルドな酒ならより円熟味を増したトロミのある酒に変わります。
雑味やザラツキをこの釉質が抑えてくれるのか分かりませんが、とにかく上質な酒ならより上質に感じられる不思議な作品なので、愛飲家の方にはぜひお試し頂きたい逸品です。
「濱中史朗 スタッズカップ レオパード」
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